長い手足を生かして繰り出す鋭い突きが武器の久良知選手。これまでにテニス・バレエ・バイオリンを習っていた経験があるなど、多才な一面を持つ。そんな彼女の半生とこれからに迫ります――。

1993年5月21日に福岡県で生まれたみほちゃん。年の近い2人の兄を見て育ったやんちゃな女の子。じっとするのが苦手で、大好きな木登りをしては擦り傷ばかりつくっていた。そんな少女がフェンシングと出会うのはまだ先のこと――。

興味をもったら何でも挑戦 習い事で培った多彩な才能

「親に『興味を持ったものは何でも挑戦しなさい』と言われて育てられました。習い事は早いもので2歳から。バレエ、バイオリン、水泳、ピアノ、マリンバ、テニス、習字、ドッヂボール。とにかく色んな習い事をしました」
一週間のうち習い事がないのはたった1日か2日。アスリートになった現在の生活と大差ないほどに、忙しい毎日を送っていたという。
「フェンシングには身体能力はもちろんですが、リズム感も意外と重要。小さい時にスポーツに限らず色んなことを経験できたのが今にいきていると思います」

出会ってすぐに訪れた 競技人生の転機

中学時代は部活動には所属しておらず、習い事も週に1回テニスクラブに通う程度。多忙な幼少期とは打って変わって、マイペースな日々を送っていた時にフェンシングと出会うことになる。
「テニスクラブの友達に勧められて2年生の時に見学をしたのがきかっけでした。3年生になってからテニスと並行して週に1回、習い事感覚でフェンシングをはじめました」
そして競技をはじめて1年も経たずに転機が訪れる。東京で行われた合宿に参加した際、彼女の素質を見抜いたJOCエリートアカデミーから声をかけられる。そこでは全国から有望なジュニア選手が集められ、世界で活躍できるようなトップアスリートの育成を目指す。
「断るつもりでした。フェンシングもはじめたばかりで、地元には行きたい高校もありました。なかなか踏ん切りがつかなかったけれど、母からは『自分の可能性を信じてみなさい』と背中を押されました」

早すぎる独り立ち 競技への覚悟

中学卒業と同時に単身上京。北区にある味の素ナショナルトレーニングセンターを拠点に、本格的にフェンシングをスタートさせる。
「練習相手がオリンピック選手ばかりで全く歯が立ちませんでした。フェンシングもうまくいかず、親も友達もいなかったので、最初の頃は福岡を恋しく思うことばかりでした」
そんな不安な気持ちをかき消すように懸命に練習を続けた彼女。その努力の甲斐あって、1点突くことに必死だったものが、2点3点と徐々に点を獲れるようになっていく。
「練習では勝ったことがなかったけれど、試合になると相手は私と同じ高校生。突きがどんどん入りました。『私って勝てるんだ』って気づいたときに初めてフェンシングが楽しいと思えるようになりました」
3年生の時にインターハイ団体で優勝。エリートアカデミーで過ごした3年間は、確実に彼女を強くした。卒業後は強豪選手を多く輩出するフェンシングの名門・法政大学に進学。1年生でアジアジュニア個人3位、3年生ではU-23アジア大会個人3位。他にも多くの国際大会で成績を残した。
「フェンシングをはじめるのが周りと比べると遅かったので、ずっとそれが気がかりでした。だから国際大会で初めて個人メダルを獲った時はすごく嬉しかったです。今までフェンシングを続けてきたことは間違いじゃなかったんだと思えました」

子どもたちとの交流が 競技への原動力

周りの後押しもあり、大学を卒業後も競技を続ける決意を固め、日本オリンピック委員会(JOC)の就職支援制度「アスナビ」を介して、2016年城北信用金庫に入庫する。
「大きい大会はほとんど海外で開催されるので、年間10回は海外に行きます。学生時代、遠征費は全て自己負担で大変でしたが、今は城北信金のサポートがあるので、安心して競技に打ち込むことができて、とても充実しています」
海外遠征の合間には小・中学校に赴き、講演会やフェンシング教室を行っている。
「小学校で講演会をした後、一人の子に『久良知選手の話をきいて、苦手なことでもチャレンジしてみようと思いました』って言われたんです。私の話をきいて少しでも何か思ってくれるものがあることが嬉しかった。子どもたちの言葉は私が競技を続ける励みになっています」

勝利への近道 次なる目標

2018年12月に行われた全日本選手権大会では個人5位。前回大会16位から順位を上げた。
「他と同じことをしても結果が出ない。それなら何かを変えなきゃいけないと思って試行錯誤しました。自分の苦手とする部分、強みを分析してトレーニングメニューを見直しました。ベスト8で負けてしまったことは悔しいけれど、1年間やってきたことは出し切れました」
1月から5月にかけて多くの海外大会へ出場を予定する彼女に、今後の意気込みを尋ねた。
「まずは自分が今やらなければいけないことを一つひとつクリアにする。それが勝利への近道だと思っています。一番の目標は東京オリンピックに出て、個人・団体ともメダルを獲ること。会場を私への応援でいっぱいにしたいと思っています」
高い目標と周囲の応援を原動力に前へと進む。

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